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日英Meetup in London

   今、在外研究でロンドンに来ているが、諸般の事情で家族と日本語で話す他に、話す機会がほとんどない。 ネットで日本人とイギリス人のMeetupを探していってみると以下のものがよかった。他にもいくつかあるが、行ったことがないのでわからない。 日本語会話の会  パブで何時間か三々五々に分かれて話すというもの。日本語を話したがっているイギリス人(正確にはロンドン在住非日本人)が多く来るので、話しやすい。生活や旅行などいろいろ情報も聞きだすこともできる。イギリス人7割、日本人3割くらい。イギリス人の多くは日本語の日常会話には支障がない。日本人同士の会話にもなるので、生活情報には重要なこともある。イギリス人は、こちらが英語で話せば、英語の練習にも付き合ってくれる(人によるが) 。 月1回第1火曜、予約不要。参加費£3、食事つきはさらに食事代。その他、不定期にイベントあり。今年で25周年だそうで、しっかりとしたウェブサイトもある。 29歳以上の日英交流イベント  29歳以上、となっているが、こちらの方が若い人が多く、騒々しい。不定期開催。月に2回以上はあると思う。参加費£2。 このイベントの前に同じ会場で、 言語交換イベント が開かれる場合がある。こっちは参加費1ポンド。日本人1人、イギリス人(正確にはロンドン在住非日本人)1人、または2人で話をする。20分くらいで人を入れ替える。こちらの場は落ち着いて話ができる。この二つは Dillonという人が主催者。 情報収集が目的の場合はあらかじめ質問を決めておかないと何となくで終わってしまう。英語の勉強が目的の場合は、イギリス人が日本語を話したがっているので、こちらが勝手に英語を話し始めることが必要。参加者はだいたい性格の良い人が多い。こちらの変な英語でも理解しようとしてくれる。ロンドンで英語が分からないとストレスがたまるが、こうした場は逆に日本人が優位になる。

小幡道昭氏報告「貨幣の変容と多態化」へのコメント

 

小幡氏の報告内容はこちら

評者の立場は「銀行の仕組みを抽象化した信用貨幣論」なのでコメントにはバイアスがある。

 本報告は、「変容」を論じた小幡[2023]を前提に、その続きとして「多態化」を論じるという位置づけだが、小幡[2023]の内容は必ずしも共通されていない可能性がある。

 原理論には、複数の変容を導く分岐構造となるポイントがいくつかあるが、貨幣の変容の「並存排除」(6頁)はおそらく貨幣特有である。また、変容の型の数もすべての分岐構造で2つとは限らない。いずれにしても他の分岐構造には研究が乏しすぎるので何とも言えない。そのためこのコメントでも貨幣についてのものに限る。


「はじめに」の部分について

貨幣についての【コア原論、変容論、多態化論】の構造はおそらく以下の表になっている。


 

「Ⅰ.コア原論」の部分について

①従来の方法から転換について(本報告と関係なければ不要)

本報告は小幡[2023]に続くものだが、小幡[2023]は、従来の小幡氏の方法(小幡[2009]、あるいは広く宇野弘蔵以来の方法)とは断絶、あるいは転換がある。

たとえば、本報告については、2頁の「一般的等価物」の導出方法が従来とは異なる。

小幡[2009]では、交換を求める形態が先にあって価値表現は意図せざる結果、とある(小幡[200237)。そして拡大された価値形態から一般的等価物が現れる。

 しかし小幡[2023]では「交換を求める形態」と「拡大された価値形態」をともに否定している

 また、同じ論点になるが、相対的価値形態にある商品所有者の存在と欲求も捨象されている。

 その他、従来の方法から転換があれば、本報告の理解に必要な範囲で言及してほしい。(本報告とは関係なければ不要)

②「蓄蔵手段」について

蓄蔵手段の機能は「多様な金融商品に広がる」(4頁)とある。「金融商品」といっても、貨幣同様の決済性預金から、高い利殖の手段となる株式に至るまでいろいろある。

 名目での価値の蓄蔵であれば「現金同様物」だろう。であれば、「多様な金融商品」とまでは言うのはむりがある。

 そうではなく、貨幣はその価値が不可知性を帯びる(小幡[200961-62)ため、売買を繰り返して価値を維持することを金融「商品」による蓄蔵というなら、それは貨幣ではなく、資本の機能である(小幡[200979)。(この点は「多態化」にも関連する)

 

「Ⅱ.変容論」の部分について

③「債権型貨幣」の債権とは何を受け取る権利?

(よくある質問だろうが)債権型貨幣」の債権とは、「何を受け取る」債権なのだろうか?

 小幡[2023]は「価値表現の等価物を構成する債権、貨幣でも商品でもなくモノを給付対象とする種類債権fungible claim」(小幡[202346)とする。しかし「種類物」でも「特定物」でも、債権であれば、給付を受ける権利という点では同じである。

 しかし小幡[2023]では、これまでの宇野以来の方法の基本だった「交換を求める形態」を否定し、等価物は価値表現の素材となるだけである。相対的価値形態にある商品の所有者が欲しているわけではない。そのため債権といっても、その等価物を引き渡されても困る。そのため、直接型も債権化する圧力を常に受けることになろう。(ただし、このコメントは評者のアプローチによるバイアスがある)

 

小幡[2023]物品型貨幣と債権型貨幣の分類

 

 直接間接問題

直接型(特定物を等価物にする)

間接型(種類債権を等価物にする)

代表問題

択一型

物品型貨幣

包括型

債権型貨幣

コメントの最後の図も参照

総じて、宇野以来の「交換を求める形態」が否定されることで、貨幣のもつ直接的交換可能性まで消滅している。(ここは①の論点と共通)

とはいえ、この問題は以下の理由で本報告では関係ない可能性がある。

小幡氏の目的は「貨幣発生のプロセス」とは区別された「貨幣変容の構造」のようである。(※「貨幣発生のプロセス」とは特定の商品が貨幣として選ばれていくプロセスのこと。

また、小幡[2023]には「商品所有者は、貨幣が存在する《場》があって、はじめて行動できるのであり、先に行動があって貨幣が生みだされるのではない」)と、「貨幣が存在する《場》」の論理と、「商品所有者の行動」との区別があり、この区別と対応している可能性がある。(小幡[2023]46頁)

 

「Ⅲ.多態化」の部分について

④多態化の「派生貨幣は、結局は代用貨幣であり、「中心貨幣」の違いからは独立では?

(よくある質問だろうが)いろいろある「派生貨幣」は「中心貨幣」からの派生ではあるが、貨幣の多態化というよりも、貨幣の支払い約束が「代用貨幣」になっている、あるいは、貨幣の支払い指示というだけではないだろうか。(7頁) 

 派生貨幣をもたらすのは技術的な要因によるところが多く、これらの要因は、中心貨幣が何であろうと機能しうるのではないか。つまり中心貨幣が何であろうが、「派生貨幣」はほぼ同じものが存在しうる。

 たとえば、つまり中心貨幣が金鋳貨であっても預金通貨が派生貨幣になりうる。有価証券が派生貨幣になるなら、中心貨幣が中央銀行券であっても貴金属は金証券として派生貨幣になりうる。

 無理に中心貨幣による派生貨幣の違いをつけようとすれば、貨幣と金融の歴史的変化をそのまま記述することになりそうだ。

 

⑤中央銀行券の印刷技術:なぜ「紙」という物的性質にこだわり、債権として純化しないのか?

 中心貨幣のレベルで、金属貨幣が存在しうる外的条件として、金属の同質性を保証する精錬技術が必要(9頁)、というのは同意できる。

しかしこれを銀行券の印刷技術にパラフレーズするのは疑問である(10頁)。

金属貨幣が「物品型貨幣」として物品としての精確さを必要とするのであれば、中央銀行券は「債権型貨幣」として債権としての精確さ(健全さ)を必要とするだろう。そのため、債権型貨幣としての銀行券にとってまず必要なのは、印刷技術よりも、確実な債権を保証する銀行システムの成立だろう。

たしかに現在の法貨は日本では、無制限法貨としては中央銀行券である。しかし紙の形に拘泥すると、「債権型貨幣」の債権としての特徴が抜けて、表券貨幣にずれ込むのではないか。商品貨幣論の立場では、中央銀行貨幣が商品貨幣という場合、銀行の資産に商品価値の根拠があると論じるのが通常である。そのため債権としての健全さは欠かせない。(この点は「③債権型貨幣」の論点にも関連する)

「可能性にすぎないが「不換中央銀行券」のかわりに中央銀行預金のような紙券以外のものが出現する可能性も排除できない」(9頁)というあたりでは紙への拘泥が明瞭だ。銀行券の印刷技術と同様にブロックチェーンなどによって「複製技術を用いながら偽造を防ぐ」(10頁)ことになれば、中心貨幣は、中央銀行券から中央銀行預金(またはCBDC中央銀行デジタル通貨)に移る。しかし両者はともに債権型貨幣に対応するはずである。したがって中心貨幣は「中央銀行券」ではなく、「券」を削除した表現にすべきだろう。そうすると「中央銀行券」は派生貨幣に移る。(中央銀行信用貨幣や中央銀行債務貨幣など)
 

この項⑤と③の論点は、簡単な価値形態における等価物が債権になる場合の理解に根本的な違い(あるいは評者の誤解)があるようだ。

 

補足:小幡[2023]の簡単な説明図

以下はIwata[2024]から抜粋

Table 2. Combination of relative form of the value and its equivalent (sample).

Relative form

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

Equivalent

4

7

14

14

11

7

8

6

14

13

3

11

15

8

10

Figure 8. Representation Problem and the Unification Problem.




参考文献

小幡道昭[2009]『経済原論:基礎と演習』東京大学出版会

小幡道昭[2023]「貨幣変容の構造」『季刊経済理論』60-1

岩田佳久(), 新井田智幸(), 泉正樹, 結城剛志, 小幡道昭, 村上允俊, 海大汎[2022]マルクス経済学の現代的スタンダードを語る」東京経済大学学術フォーラム報告書

Iwata, Yoshihisa. 2021. Even inconvertible money is credit money: Theories of credit money inJapanese Marxian economics from the banknote controversy to modern Unotheories. Journal of Tokyo Keizai University: Economics 311. 99–120.

Iwata, Yoshihisa. 2023. Change in Differential and Absolute Rent as an Extension of Marx’s Theoryof Ground Rent to Knowledge, International sessions of the 71st Annual Conference of the Japan Society of Political Economy. abstract

Iwata, Yoshihisa. forthcoming 2024. Towards the New Theory of Commodity Money on InconvertibleCredit Money. Journal of Tokyo Keizai University: Economics 321.  abstract












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