スウェーデン中央銀行(Sveriges Riksbank)の最近のバランスシート
データ
1999年9月から中銀のバランスシート(週次)
市中銀行のバランスシートは1998年1月からStatistiska
centralbyrån (月次)
https://www.statistikdatabasen.scb.se/pxweb/en/ssd/
それ以前の長期時系列データ(年次)はHistorical Monetary Statistics of Sweden
https://www.riksbank.se/en-gb/statistics/historical-monetary-statistics-of-sweden/
中銀はVolume 2(年次), 市中銀行はVolume 3(年次と月次)にある
中銀の資産項目
中銀の負債項目
市中銀行の準備率
|
2024M10 |
120 Total assets |
11,283,835 |
101 Cash and credit balances at
central banks |
1,297,835 |
102 Treasury bills etc eligible
for central bank refinancing |
745,259 |
103 Lending, Total |
6,923,604 |
1030111 Lending, The Riksbank |
0 |
105 Bonds and other interest
bearing securities |
562,650 |
106 Shares/participations |
416,935 |
109 Intangible assets |
19,617 |
110 Tangible assets |
46,091 |
111 Subscribed capital unpaid |
0 |
113A Other assets etc. |
1,271,844 |
図3ではリーマンショック後に外貨の預金準備率が激増しているので、リーマンショック前だけをみると、レベルは比較的安定している。
図6
準備率の長期的推移
Historical Monetary Statistics of Swedenを使って年次で準備率をみる。
中銀の負債のDeposits: non-interest bearing を分子にし、株式銀行と貯蓄銀行の預金の合計を分母にする。
ざっと見た感じで、年次データのDeposits: non-interest bearing は中銀の週次データの「スウェーデン・クローナ建ての金融政策関連負債(スウェーデン信用機関)」に対応するので、準備金と言っていいようにみえる。
スウェーデンは1996年ころから準備率が急減するが、これは法定準備率が廃止されたからである。それ以外の時期についても法定準備率の推移と対応させる必要があるが、法定準備率がなければ準備金はゼロに近づく。ただし、金融逼迫時の中銀による与信が前提だろう。
原理論からの考察
たとえば日本銀行は補完貸付制度として、適格な担保があれば必ず与信をする。正確には日銀ウェブサイトによれば「日本銀行が金融機関等の借入申込みを受け、差入れられた担保の範囲内で、原則として基準貸付利率により翌営業日を返済期限として受動的に実行する貸付け。」である。
事前的対処の組織化として、補完貸付制度のように確実に準備を調達できる仕組みがあれば、準備金をあらかじめ保有しておく必要はない。市中銀行が必要とする準備金は、中銀からの調達可能性を加味した形になる。
いくつか考察すべきこととしては、①法定準備は原理論で想定する「準備金」かどうか。
原理論で言う準備(率)は法定準備率がない状態でのPreferred Minimum Range of Reserves (PMRR)になりそうだ。PMRR is an estimated range for the minimum level of reserves that satisfies commercial banks’ aggregate demand, both to settle their everyday transactions and to hold cash as a precaution against potential outflows in times of stress. (The importance of central bank reserves by Andrew Bailey, p.11)
②市中銀行が保有する中銀当座預金は原理論で想定する「準備金」かどうか。
現在の超過準備は、中銀が長期金利を下げるためのLarge scale asset purchase programme (LSAP)の結果なので、市中銀行からすれば預金への支払い請求の準備とは言えない。この超過準備に有意なプラス利子率が付いていれば、準備金というよりも超過流動性吸収のための中銀手形と同じになる。しいて言えば二線準備である。山口重克は、銀行の保有する資産に「信用リスクがない」状態であれば準備金は二義的な意味しかない、としたが、「信用リスクがない」を明確に保証するのが中銀手形や国債(特に日銀の補完貸付制度の下で)といえる。
もっと考察すべきこともあるが、今回はここまでとする。
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