学術フォーラム「マルクス経済学の現代的スタンダードを語る」

 10月23日(土)に 東京経済大学で学術フォーラム「マルクス経済学の現代的スタンダードを語る」を行います。開催の詳しい形態などについてはウェブサイトをご覧ください。

 ここで「スタンダード」とは「標準的な」とか、「平均的な」という意味ではなく、これからのマルクス経済学はこういうふうにあるべきだ、そして今後のマルクス経済学はこれを出発点にして発展させるべきだ、という意味です。
 今回の企画が、従来のマルス経済学の企画とは異なる特徴が2つあります。1つは複数の報告が共通の立場や体系性を持っていることです。報告者の間で研究会を行い議論してきました。私が報告するわけではないので責任はとれないところもありますが、3つの報告は一貫した前提を持っているはずです。

 もう1つは学生も対象にしていることです。「学生も対象にしている」とは、「内容が簡単」という意味ではなく、前提が異なる人にもわかるように、現代のマルクス経済学の到達点を伝えるということです。

 「前提が異なる」とはどういうことか具体的に言えば、たとえば、経済思想や経済学史の人たちはマルクスが何を言っているか知っていても、その後のマルクスの理論がどのように発展してきたのかについては知らない人が多い。たとえばマルクス以降、価値形態論で一般的等価形態を導出する方法、労働価値説の取り扱い方、窮乏化説などで大きな変化があります。マルクスの学説として経済思想史や経済学史の人たちの説く内容、さらに一般の人々がマルクスの考えだと思っている内容と、現在のマルス経済学の水準には大きなギャップがあります。このギャップを埋めることが今回の企画ということでもあります。

 また宇野理論を何十年もやってきた人たちから見れば、今回の企画の内容は「それは宇野理論ではない」とか「宇野さんはそんなことは言っていない」と思われるものです。この企画の目的は宇野理論の解説ではなく、マルクスや宇野の理論を発展させた内容を一つの体系として提示することです。そもそも宇野弘蔵と、宇野派と言われる人たちは、マルクスの不十分な点を指摘して、それを克服することに自己の存在意義を持っていたようなものです。たとえば岩波文庫版(かつての岩波全書版)の宇野弘蔵『経済原論』の「索引B 本書で取り上げた『資本論』における問題点」があります。宇野以降の宇野派も同様に、宇野の不十分な点を克服することを自己の存在意義とすべきでしょう。

 最後に学生にとってです。マルクス経済学を本格的にやろうとすると、マルクス、宇野、さらに大内力や日高普などたくさんの先行研究が上からのしかかってきます。そうではなく、今回の企画では「マルクス経済学の現代的スタンダード」を設定し、ここを出発点にして、さまざまに発展させてほしいということです。発展させる方向としては今回の企画で示されるはずですが、労働過程そのものの再検討、金貨幣を媒介にしない信用貨幣、現代の資本主義の歴史的段階の特徴付けなどです。

 今回、取り上げる範囲は、マルクス経済学の中でも重要な部分ですが、理論体系全体の中の一部です。今回、取り上げられなった部分は、その次は自分がやりたい、という人がいれば続きを行うことにします。

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