【新しい地代論5】特別利潤から本源的自然力タイプ2への論理展開:本源的自然量の所有と利用における結合と分離(3月13日少し修正)

 


(3月13日少し修正)

特別利潤(かつては「特別剰余価値」とよんだ)と、本源的自然力タイプ2はともに知識や生産技術を実質的な内容としている。両者の違いは特別利潤による超過利潤は一時的過渡的であるのに対して、地代論の対象となる本源的自然力による超過利潤は何らかの期間で持続する。しかし、従来の原理論では、「特別利潤は知識と工業、地代は土地と農業」と分けていた。ここで知識や生産技術を地代論に含めると、特別利潤と地代との間に実質的な内容の共通性が現れ、両者の差異を生み出す論理展開を考えることが必要になる。具体的には、知識や生産技術の所有と利用の結合(未分離)と分離や、超過利潤の形の違いなどである。

特別利潤と地代の区別に関する先行研究

 従来の原理論における特別利潤と地代の扱いをみておく。まず、宇野『経済原論』は生産論で、相対的剰余価値の生産は総資本と総労働の関係で存在するが、相対的剰余価値の生産を促進するのは個別資本が特別剰余価値を獲得しようとする行動だと論じる(岩波全書版69頁)。その後、分配論で特別剰余価値と地代の違いに言及する。両者の違いは、まず、地代論の対象となるのが制限される自然力である(177)ということはもちろんだが、さらに踏み込んで、特別剰余価値では新たな生産方法の開発に費用がかかることが価値としての根拠となるが、土地の場合はそうした費用のない「虚偽の社会的価値」だ、という区別をしている(同180181頁)。

 しかし、近年の労働価値説や生産価格論では、総資本が引き出した総剰余価値の分配として利潤や生産価格を論じる(以前の記事参照)ので、個々の資本が獲得するのは特別「剰余価値」ではなく、特別「利潤」の方が適切だろう。さらに、新たな生産方法に関する知識や生産技術の開発に要する費用には客観的な根拠がないので、なおさら特別「価値」とは言えない。また、土地についてもその多くは、原初状態のままで使われるのではなく、それまでの恒久的土地改良が積み重なっているのだから、費用がかかっていないとは言えない。

日高『経済原論』は両者の違いを、地代が生産条件の違いに基づき恒久的であるのに対して、特別剰余価値は生産手段の一時的経過的な例外的優位性に基づく、とする(189)。

ここまでは地代論の対象を農業や土地にとどめているが、小幡『経済原論』では、土地の他に、新たな知識や生産技術も本源的自然力として一括し、それらが地代をもたらすのは、その知識や生産技術が制度と権力によって利用制限される場合、とする。さくら原論研究会『これからの経済原論』でもほぼ同様の指摘がある(147)。

補足:「本源的自然力」の指すものについて

ところで、「本源的自然力」の定義は、たとえば小幡『原論』では「生産に用いられるが、再生産されない生産条件」(201)である。「再生産不可能」に、利用制限が含まれるかはよくわからない。土地に限れば、土地は特定の有体物と不可分に結びついているため、「再生産されない」ということは、すなわち「利用制限される」ことになる。しかし知識や生産技術は特定の有体物に拘束されないため、「再生産されない」ことが「利用制限される」ことにはならない。つまり知的所有権の対象ではなく、利用制限されない知識は誰にも利用できるが、知識はそもそも「生産」されるものではなく「発見」されるものなので、その知識は無制限に利用されても「再生産」されることはない。したがって、利用制限の有無にかかわらず、知識や生産技術を「本源的自然力」とみなす方が論理的だろう。

このことは、本源的自然力を知識や生産技術に拡大する際には、土地特有の性質をそのまま前提にすることはできず、本源的自然力をタイプ1とタイプ2のように複数の形に変容させる必要があることを示している。このブログでは一貫してこの立場である。つまり知識や生産技術は利用制限されてもされなくても本源的自然力だが、これらが地代を生むには、私的所有と利用制限が前提となる。

もし、知識も制限されなければ本源的自然力とは言えない、と思うとすれば、それは、変容論的アプローチなしで、土地のようなタイプ1の性質をそのまま知識や技術に適用しようとするからである。

従来の原理論の展開における問題点

従来の原理論における地代論の具体的な記述は、小幡『経済原論』やさくら『経済原論』も含め、陰に陽に、土地を主たる生産条件とする農業で考えている。また、特別利潤と地代について「特別利潤は一時的過渡的、地代は永続的」という区別は、結局は「特別利潤は工業、地代は農業」という区別に帰着している。しかし地代論に知識や生産技術を加えるならば、特別利潤と地代との連続性と差異を考察する必要があり、「特別利潤は一時的過渡的、地代は永続的」というだけでは不十分である。なぜなら、

㋐時間の単位を小さくすれば、「一時的過渡的」も何らのレベルで持続的となる。

㋑従来の原理論では、特別利潤においてその取得の源泉となる新たな知識や生産技術は産業資本家が発見し、所有し、利用し、特別利潤も産業資本家が取得するに対して、地代論では土地を利用する資本とは異なる土地所有者が土地を所有し、地代も土地所有者が取得する、と想定している。従来の地代論をそのまま知識や生産技術に適用しようとすると、特別利潤と地代論の間に所有と利用についてのギャップが生じる。このギャップは、「一時的過渡的」「永続的」という区分方法では説明できない。

㋒産業資本が発見し所有し続ける新たな知識や生産技術による超過利潤を、「一時的過渡的」期間を超えて取得し続ける場合、資本と本源的自然力所有者とが一体化し両者の区別ができなくなる。なお、小幡『経済原論』では本源的自然力を土地だけに絞る形で、本源的自然力の改善(恒久的土地改良)は資本にはできない(210-211)とすることでこの問題を回避しているが、それでは本源的自然力を知識や生産技術に拡張した意義を失ってしまう。

㋓特別利潤では、旧来の生産方法が調整的な生産条件であり、差額地代DRと同じ形になる(図1)のに対して、本源的自然力タイプ2では、所有された優等な生産方法が調整的となり絶対地代ARと同じ形になる(図2)。(以前の記事参照)

図1 

図2 





したがって、土地を抽象化し、本源的自然力として知識や生産技術を含めるためには、「知識や生産技術は土地のようなもの」といった比喩にとどまることはできない。本源的自然力をタイプ1とタイプ2への変容として把握するとともに、特別利潤から本源的自然力タイプ2へと質的な違いをもたらす原理論の論理展開が必要になる。

特別利潤から本源的自然力タイプ2への論理展開の方向性:概観

論理展開の大きな道筋としては、個々の産業資本家が新たに得た優等な生産条件がその産業資本の内部にとどまっているのが特別利潤であり、それが外部に押し出され自立化すると本源的自然力となる。自立化した本源的自然力タイプ2を資本家以外の主体が取得すれば、資本家階級と対立する本源的自然力所有者階級が生じる。

つまり特別利潤から本源的自然力タイプ2への論理展開の大きな流れは以下のようになる。

個々の産業資本内部にとどまる特別利潤 

     ↓

外部に押し出され自立化する本源的自然力・地代発生

     ↓

資本の外側にいる本源的自然力所有者階級

他方、タイプ1ではもともと利用と所有が分離している。タイプ1で特別利潤があるとすれば、優等地の契約期間中における資本の優等な生産性の追加投下である。これは追加の資本投下が最劣等の調整的な生産性よりも優等であれば、ここで生じた超過利潤は契約期間中には産業資本が取得する。これが特別利潤になる。本源的自然力タイプ1は特定の有体物と不可分に結びついているため、この特別利潤はその土地以外に広がることはない。この特別利潤は契約更改とともに地代として土地所有者に吸収されるため「一時的過渡的」である。なお、ここでの特別利潤の定義はタイプ12ともに「一時的過渡的に、個々の産業資本の内部に制限された優等な生産条件による超過利潤」となる。この定義は従来の理解とは「一時的過渡的に」は同じだが、「個々の産業資本の内部に制限された」の部分は、従来の特別利潤の定義にあった知識や生産技術(本源的自然力タイプ2)のみへの適用の限定を除去して、本源的自然力タイプ1にも適用可能になっている。

本源的自然力タイプ1の場合にどうなるかを補足的に追加すると、本源的自然力タイプ1では、追加の資本投下で得られる優等な生産性は、本源的自然力所有者との契約によって契約期間内に限り一時的に個別の産業資本家の内部に排他的に保持されている。タイプ2では特許が法制度で他者に対して利用制限されるのと同様に、タイプ1では土地所有者の契約と有体物の制限性によって他者に対して利用制限される。

こうして本源的自然力タイプ1では、論理展開の大きな流れは以下のようになる。

資本に対立する本源的自然力所有者階級 

     ↓

産業資本が本源的自然力を借りる・地代発生

     ↓

契約期間中に産業資本が追加投資して特別利潤を取得

     ↓

契約更改で特別利潤が地代へ

このように、本源的自然力タイプ2とタイプ1をそれぞれ独立して取り扱えば、論理展開が逆向きになる。従来の原理論では2つのタイプを混然として展開していたので、このことが気づかれなかった。

本源的自然力の利用と所有が分離する型は、土地のような本源的自然力タイプ1が容易に想定され、初めから分離していれば地代論だけを説くのは容易だ。ただし論理展開としては特別利潤と地代論とが切断され、両者を結ぶ論理展開は難しくなる。

他方、知識や生産技術といった本源的自然力タイプ2を対象に、特別利潤から地代論を説こうとすると、本源的自然力を産業資本が所有する結合型から論じなければならないので、本源的自然力所有者階級の発生を説くのが困難になる。小幡『経済原論』は「本源的自然力がすべて私的に所有されているものと仮定する」(202)として、土地と同様に、資本の外部に知識や生産技術の所有者があらかじめ存在すると仮定することで、本源的自然力の利用と所有の分離を無前提に前提化し、特別利潤から地代への展開を断ち切り、本源的自然力所有者階級の発生を論じる困難を回避している。

本源的自然力の2つのタイプと、利用と所有の結合と分離

本源的自然力の2つのタイプと、利用と所有の結合と分離を図式化すると次のようになる。

なお、ここで結合とは「分離を経験していない結合」であり、結合というよりも「未分離」といった方が正確そうだ。つまり自己創設の知識や生産技術が資産としては認識されていない状態である。いったん分離したものを購入した場合、分離が認識された統合であり、ここでは結合とは言わないことにする。

表1 本源的自然力の2つのタイプと、利用と所有の結合と分離


 

所有者と利用者

分離

結合(未分離)

本源的自然力

タイプ1

タイプ2


各セルの代表的な形は、①は産業資本が土地を借りて生産、②は産業資本が知識や生産技術の利用権を得て生産、④は産業資本が自分で開発した知識や生産技術を用いて生産、となる。

①と②では本源的自然力が自立化するのに対して、④は一時的であれば特別利潤の対象であり、特許となって持続した場合でも、本源的自然力としては自立化の弱い形といえる。次項から説明を加える。

③は存在しない。なぜなら本源的自然力タイプ1は土地のようにもともと資本から分離して存在していると考えるのが自然なので、未分離な結合はありえないからである。

 

本源的自然力の利用者と所有者が分離している場合①②

①では古典派の時代から前提されているように、土地はもともと資本の外側に存在し、所有者がいる、と想定できるので、資本はいきなり「借りる」という形で論理展開すればよい。また、②でもその所有者を資本の外側にいる発明家やベンチャー起業家、半ば公的な研究機関などとして想定すれば土地と同じように分離型として扱える。

②では本源的自然力タイプ2が特定の有体物から分離しており、さらに所有と利用も分離しているので、本源的自然力の所有者は、地代さえ受け取れればどの産業資本にも貸し出すことで地代収入を増やすことができる。ここでの利用「制限」は量的な制限ではなく、利用のためには地代を支払わなければならない、という意味で「制限」である。そのため地代はARになる(上記の図2)。

①では本源的自然力の利用と所有が分離しているが、本源的自然力が特定の有体物に拘束されているため、優等な生産条件(優等な本源的自然力)は有体物の量の面から制限を受ける。そのため地代はDRになる。

本源的自然力の利用者と所有者が結合している場合④

④では特定の産業資本が自ら発明した新たな知識や生産技術を所有して利用しており、その知識や生産技術はその産業資本家の生産資本に不可分に一体化し拘束されている。そのため、分離した場合②とは異なり、生産量が制限され、調整的な生産条件は、この知識や生産技術を用いない旧来の生産条件となる。こうして、新たな知識や生産技術を所有する産業資本が得る地代はDRと同じ形になる(上記の図1)。この新たな知識や生産技術が特定の産業資本家の生産資本による拘束から外れ、広く普及すればDRは消滅する。これは従来の原理論の特別利潤と同じである。

このように④では「一時的過渡的」でも「永続的」でも、ある一時点を切り取って示せば、特別利潤はDRの形に収まる。

本源的自然力の利用者と所有者の結合から分離へ

 しかし④(本源的自然力タイプ2-未分離結合型)のように本源的自然力の利用と所有が分離せず結合したままでは、産業資本の本体と本源的自然力とが混然一体となり、産業資本とはいえない。産業資本が本源的自然力を外部に押し出して利用と所有が分離する契機は資本移動である。つまり本源的自然力を所有するこの産業資本が資本移動(事業再編を含む)して、不要となった本源的自然力を売りに出せば、価格がついて地代の源泉である本源的自然力タイプ2が明確に分離して現れる。資本家以外が買い取れば本源的自然力所有者として資本に対立する階級となる。

なお、本源的自然力から常に超過利潤が得られるのであれば、本源的自然力を手放して資本移動する理由がないように思うかもしれないが、平均利潤や超過利潤は将来にわたって常に保証されるものではなく、将来も含めて多数の資本の間には相異なる思惑がある、そのため、現時点で超過利潤を得ていたとしても、それを手放す資本移動もあることは想定されなければならない。

他方で、他の産業資本家が買い取った場合は、本源的自然力所有者階級が自立化しないが、買い取った産業資本の内部で産業資本の本体とは区別された、地代を生む本源的自然力が認識されることで、本源的自然力の自立化を説くことができる。具体的には次項のPPAで説明する。

 ところで、資本移動の想定は一般的利潤率と生産価格の成立に不可欠の想定である。ミクロ経済学では資本移動を前提しないので、利益最大化は限界費用=市場価格までの生産となる。しかしマルクス経済学の原理論では利潤率を最大化するために資本移動が起きることで利潤率が均等化し生産価格が成立する。資本移動においては一般的利潤率を踏まえて超過利潤が認識され、その源泉である本源的自然力タイプ2も資本とは独立して対立する姿をとる。

かつて、大内力や日高は土地所有の発生を利潤率均等化の必要から説いたが、その方法は行く先論アプローチにとどまっていた。しかし、本源的自然力を所有する資本が資本移動によって本源的自然力を売買の対象にし、さらに賃貸借の対象とすることで、一般的利潤率を基準に超過利潤とその源泉としての本源的自然力を認識し、自立化させていく、と説くことで行動論的アプローチとして本源的自然力の自立化を説くことができる。

 

産業資本の間での本源的自然力の売買の場合

 本源的自然力の自立化は現実の会計実務ではM&AにおけるPPAPurchase Price Allocation:取得価額配分)でよくわかる。以下の記述は会計実務そのものではなく、原理論による解釈も含んでいる。

M&Aで支払った価額と、被買収企業の簿価での純資産との差額は「のれん」となるが、PPAではそれを一括して「のれん」とするのではなく、買収先の企業にある超過利潤の源泉となるさまざまな種類の「無形資産」としてそれぞれ認識しその価値の大きさを測定する。

図3 PPAによるのれんの「無形資産」の認識と測定の簡単な概念図



「無益資産」には主に以下のようなものがある。

表2 「無形資産」の例示 

IFRS 3による。

 

識別可能な「無形資産」の例示

マーケティング

関連無形資産

商標、商号、サービスマーク、団体マーク、認証マーク

トレードドレス(独特な色彩、形又はパッケージ・デザイン)

新聞マストヘッド

インターネット・ドメイン名

競業業避止協定

顧客関連

無形資産

顧客リスト

注文又は生産受注残高

顧客との契約および関連する顧客との関係

契約によらない顧客との関係

芸術関連

無形資産

演劇、オペラ及びバレエ

書籍、雑誌、新聞及びその他の著作物

音楽(作曲、作詞、CMソング)

絵画、写真

動画(映画、音楽ビデオ、テープ、テレビ番組)

契約に基づく

無形資産

ライセンス使用許諾、ロイヤリティ及び使用禁止契約

広告、建設、役務・商品供給契約

リース契約

建設許可

フランチャイズ契約

営業許可、放送権

住宅ローン貸付管理契約などのサービス契約

雇用契約

採掘、水道、空調、材木伐採及び通行権などの使用権

技術に基づく

無形資産

特許技術

コンピュータ、ソフトウェア及びマスク・ワーク

特許化されていない技術

データベース

秘密製法、プロセス及びレシピなどの企業秘密


もちろん「無形資産」の「無形」とはin + tangibleで「非・有体物」という意味しかない、雑多な存在である。上の表でも知的所有権だけでなく、「契約に基づく無形資産」のように債権なども含まれていることがわかる。

主な「無形資産」の公正価値(日本では「時価」とよばれる)の評価方法は、たとえば『PPAの評価』https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-38311-3  65ページでは以下のようになっている。

表3 「無形資産」の公正価値の主な測定方法

 

分類

「無形資産」

評価アプローチ

主たる評価方法

マーケティング関連無形資産

商標、商号

インカム

ロイヤリティ免除法

超過収益法

協業避止協定

インカム

利益差分法

顧客関連

無形資産

顧客との契約、顧客との関係

インカム

超過収益法

ディストリビューター法

利益差分法

顧客との関係(顧客リスト)

コスト

再調達原価法

受注残高

インカム

超過収益法

芸術関連

無形資産

楽曲

インカム

超過収益法

契約に基づく

無形資産

フランチャイズ契約

インカム

超過収益法

利益差分法

有利・不利な契約

インカム

超過収益法

リース契約

インカム

超過収益法

独占販売契約

インカム

超過収益法

利益差分法

許認可(周波数帯)

インカム

グリーンフィールド法

マーケット

売買取引事例法

技術に基づく無形資産

ソフトウェア(自社利用目的)

コスト

再調達原価法

ソフトウェア(販売目的)

インカム

超過収益法

特許及び関連する技術

インカム

ロイヤリティ免除法

特許化されていない技術

インカム

ロイヤリティ免除法

超過収益法

仕掛中の研究開発

インカム

超過収益法



本来の地代論は確定的な生産過程を対象とするので、上の表の内、生産技術に関する「技術に基づく無形資産」だけを考えれば、その価値の測定には主に超過収益法やロイヤリティ免除法が用いられる。

ただし、ロイヤリティ免除法はすでに類似の知的所有権が賃貸借され利用料が計算されていることが前提なので、知識や生産技術といった本源的自然力タイプ2の価値を新たに測定するうえで重要なのは超過収益法の方である。

図4 超過収益法の概念図



超過収益法では、その「無形資産」が関係する収益から、その「無形資産」以外の資産、言い換えると対象となる「無形資産」の収益獲得に貢献する「貢献資産」のコストと期待利益を差し引くと、その残余がその「無形資産」による超過利益となる。その利益の将来にわたるフローを現在価値に還元してその「無形資産」の現在価値を算出する。なおここで、収益(率)と利益(率)の違いは、貢献資産の償却費あるいは維持費が原価に含まれていれば利益率であり、含まれていなければ投下資本の回収分も含めたものとして収益率となる。

この超過収益法による「無形資産」の測定は、古典的な地代論で説明されてきたものと同じである。つまり地代論では収益から投下資本の回収額と平均利潤を差し引いた残りが超過利潤となり、これが地代契約あるいは更改に際して地代として土地所有者が得る。地代契約や更改は本源的自然力に価格をつけて売買するということで、「無形資産」の売買やM&Aと同じである。

こうして産業資本の中に埋もれていた特別利潤の源泉は、資本移動やM&Aを通じて、超過利潤の源泉である本源的自然力として認識され、平均利潤をもとに超過利潤の額に基づいて測定される。こうして、特別利潤から地代へと原理論の展開が可能になる。

ただし、古典的な地代計算と異なるのは、超過収益法が投下資本額全体に対する利潤率ではなく、個々の資産に対する利益率あるいは収益率を計算することだ。全体として運動する資本を個々の資産に分解して評価し、売却可能とみなすことは新自由主義としての特徴でもある。


最後に、期待収益率の概念と、原理論の一般的利潤率の概念は同じではなく、今後も検討すべき内容である。また、それ以外にも特別利潤の定義の変更など、検討すべきことも多いが、それは本源的自然力の研究の可能性の広さを意味している。






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